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アイバンクだより Vol.36
角膜に魅せられて
愛媛大学医学部 眼科学講座 助教 井上 英紀
 私は、12年前に眼科医として愛媛に赴任しました。そこで角膜の魅力に出会い、現在、愛媛大学病院の眼科学講座で角膜を専門として勤務しております。
 愛媛大学病院眼科学講座は四国で屈指の眼科医数を誇っており、眼科領域におけるあらゆる分野(角膜、緑内障、網膜、涙道、斜視弱視など)の専門医が在籍しています。中でも愛媛大学の眼科といえば、先代の教授の大橋裕一先生、そして現教授の白石敦先生が専門とする角膜分野を最も専門としています。角膜分野に関しては、愛媛県内はもとより、四国全域から、ときには中国、九州地方の病院からも診察治療目的に患者様が紹介受診されることがあります。
 角膜とは眼球の最も前面に位置して最初に光が透過する直径1センチ程度の血管のない透明な組織です。角膜の透明性の維持は良好な視力を維持するためには必須条件になります。しかし、眼球の最前面に位置している角膜は常に透明性を脅かす危険にさらされています。外傷や感染症は角膜が透明性を失う原因としては頻度が高く緊急性を要することが多いです。それ以外にも、先天的に角膜の機能が落ちている疾患、また他の眼疾患の治療を繰り返している間に角膜の透明性が低下すること、全身の疾患の影響が角膜に及ぶことなど様々な原因が角膜の透明性の維持に影響を与えます。
 私は、角膜疾患の中でも感染症を専門にしております。角膜に感染を起こす微生物として、細菌、真菌、原虫、そしてウィルスがあります。そのほとんどが日常によく遭遇する場所や環境に生息している微生物になります。また一部の原因微生物は人間に共生しています。これらの微生物が角膜に傷がついた時や全身の免疫機能が低下した時に角膜に感染症を引き起こします。とくにコンタクトレンズユーザーや草木による外傷で角膜に感染症が発症するケースを多々見受けます。角膜の感染症は失明することもある非常に恐ろしい疾患です。コンタクトレンズを使用する際にはきちんとした管理をする、また草木が眼に入るリスクがあるときには保護用のゴーグルをするなどの対策を講じることでこれらのリスクを回避することができますので心にとめて頂ければ幸いです。
 様々な角膜疾患も含め、眼科疾患の治療の基本は点眼による加療になります。しかし、点眼加療を施行しても角膜の透明性の維持が困難な時には、手術による加療が必要になります。手術にも様々な術式が存在しますが、角膜の透明性を取り戻す最後にして現在存在する唯一無二の治療法が角膜移植術になります。
 この角膜移植術はどこの病院でもすぐにできるわけではなく、高度な設備と体制、また何より角膜を提供してくださるドナーの方がいて初めて施行できる手術になります。角膜移植術は主に角膜をほぼすべて移植する全層角膜移植術と角膜の内側を移植する角膜内皮移植術の2つの手術方法があります。それぞれ原因の疾患により術式を使い分けることになり、手術時間は1時間から2時間程度になります。他臓器(腎臓や肝臓など)の移植手術と比べると手術時間は比較的短時間にはなります。術後は感染症や移植した角膜への拒絶反応等の合併症に注意して慎重に経過をみていきます。
 我々が角膜移植手術を施行していくには角膜を提供してくださる方々とアイバンクの協力が必要不可欠であり、たくさんの方々の支えがあってこその角膜移植であると考えております。献眼してくださった方とそのご家族の気持ちに少しでも応えることができるように、そして移植した角膜が新しい人のもとで新しい日々を一日でも長く透明な状態で過ごせるように日々精進していく次第でございます。