角膜は厚さ約0.5mmの透明組織で、主にコラーゲンで構成される実質を骨組みに、眼表面側が上皮細胞で、眼内面側が内皮細胞で覆われています。このうちの上皮は、皮膚の表皮の延長であり、周期的に分裂と脱落を繰り返し常に細胞が入れ替わっています。もう一方の内皮は、六角形をした一層の細胞シートから成り(写真参照)、角膜内の水分を汲み出すポンプの働きを通じて、角膜の厚みを一定に保っています。まさに角膜にとって母なる力を発揮しているのです。
生来の疾患で成人してから徐々に角膜が混濁してくる角膜変性症という疾患があります。遺伝子異常によるもので、原因遺伝子がわかっている場合は、将来的には遺伝子治療によって進行を止められる可能性があります。そのほか、角膜感染症に罹り、角膜が混濁してしまう場合があります。角膜に感染を起こす病原体は、細菌、真菌(カビ)、ウイルス(ヘルペスなど)、アメーバ(アカントアメーバ)など多岐にわたります。特に、コンタクトレンズを不適切に使用していて、細菌や真菌、アカントアメーバに感染し、点眼薬の治療で落ち着いても角膜混濁が残って視力が低下する場合が増えています。コンタクトレンズは清潔に扱い、細菌などで汚染しないよう注意しましょう。また、全身の免疫異常(関節リウマチなど)によっても角膜に炎症が起こって角膜が混濁し、重症になると角膜に穴(角膜穿孔)が開いて、緊急で角膜移植が必要になることがあります。