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アイバンクだより Vol.35
角膜が透明であるために〜内皮細胞の持つ母なる力
南松山病院アイセンター長 大橋 裕一
■角膜内皮とは?
 角膜は厚さ約0.5mmの透明組織で、主にコラーゲンで構成される実質を骨組みに、眼表面側が上皮細胞で、眼内面側が内皮細胞で覆われています。このうちの上皮は、皮膚の表皮の延長であり、周期的に分裂と脱落を繰り返し常に細胞が入れ替わっています。もう一方の内皮は、六角形をした一層の細胞シートから成り(写真参照)、角膜内の水分を汲み出すポンプの働きを通じて、角膜の厚みを一定に保っています。まさに角膜にとって母なる力を発揮しているのです。
 生来の疾患で成人してから徐々に角膜が混濁してくる角膜変性症という疾患があります。遺伝子異常によるもので、原因遺伝子がわかっている場合は、将来的には遺伝子治療によって進行を止められる可能性があります。そのほか、角膜感染症に罹り、角膜が混濁してしまう場合があります。角膜に感染を起こす病原体は、細菌、真菌(カビ)、ウイルス(ヘルペスなど)、アメーバ(アカントアメーバ)など多岐にわたります。特に、コンタクトレンズを不適切に使用していて、細菌や真菌、アカントアメーバに感染し、点眼薬の治療で落ち着いても角膜混濁が残って視力が低下する場合が増えています。コンタクトレンズは清潔に扱い、細菌などで汚染しないよう注意しましょう。また、全身の免疫異常(関節リウマチなど)によっても角膜に炎症が起こって角膜が混濁し、重症になると角膜に穴(角膜穿孔)が開いて、緊急で角膜移植が必要になることがあります。

■角膜内皮の特性
 角膜内皮細胞の特性として第一にあげられるのが、生体内で分裂増殖しないという点です。これは内皮細胞を栄養する前房水中に増殖機転を妨げる物質が存在しているたvvVめで、たとえば手術などで角膜内皮を損傷した場合、周囲の細胞が移動することによって障害部が被覆されます。その結果として、障害を受けた角膜では内皮 細胞の面積が拡大し細胞密度は減少します。
 他方、角膜内皮細胞は加齢によっても年0.5%の率で減少しています。若い人なら通常、3000個/mm2以上の細胞密度がありますが、70歳では2000-2500と徐々に減少していきます。ただ、角膜内皮の働きが限界に達するのは一般に500個/mm2程度とされており、加齢変化が問題になることは通常ありません。

■角膜内皮を調べる
 角膜内皮細胞の検査は、角膜に一定の幅の光線を当て、その反射光を反対側から観察する鏡面法(スペキュラー法)という手法を用いて行われます。眼科外来に必ずある細隙灯顕微鏡(スリットランプ)でもおおよその評価が可能ですが、スペキュラーマイクロスコープという専用機器を用いれば、角膜に直接触れることなく撮影でき、細胞密度や六角形細胞率など、診断に必要な画像解析結果も同時に表示されます(写真参照)。




■角膜内皮の異常
 角膜内皮細胞の働きが低下すると、角膜内に水分が貯留するようになり、むくみ(浮腫)のために視力は低下します。その原因は、遺伝性、先天性、後天性と様々ですが、こうした患者さまに対しては現在、角膜内皮細胞を移植することが唯一の治療戦略です。
 角膜移植の手技は今世紀に入って急速に進歩し、古典的な全層角膜移植から、パーツ移植に分類される「角膜内皮移植」や「デスメ膜角膜内皮移植」が行われるようになっています。最近では、試験管内で培養した「他家角膜内皮細胞」やiPS 細胞から製造された「角膜内皮代替細胞」を前房内に注入する方法が考案され、安全性、有効性についての検討が行われています。この手術法が確立すれば、視機能管理面や術後合併症などでハードルの高かった先天性の内皮異常についても治療が可能になる日が来るかも知れません。

■角膜内皮のスクリーニング
 皆さんは自分の角膜内皮がどのくらいあるのか、ご存知でしょうか?先に紹介した専用機器でチェックを受ける機会と言えば、若い世代でのコンタクトレンズの処方時、あるいはさらに年を重ね、白内障手術を受ける頃になるでしょうか。万一、角膜内皮に異常がみつかった場合には、献眼というよりは、専門医の精密検査を受ける必要があります。アイバンクのドナー適応基準の注意事項には、眼の手術既往歴や虹彩炎などの内因性眼疾患の有無があげられています。その意味で、アイバンク登録時に角膜のみならず、眼のスクリーニングを実施するような仕組みができればいいですね。