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アイバンクだより Vol.34
透明で美しい角膜を守るということ
愛媛県立中央病院眼科 山口 昌彦
 私は平成27年(2015年)4月に愛媛県立中央病院に赴任し、角膜などの眼表面を診ることを専門に診療を行っています。角膜は一般に「黒目」と呼ばれますが、実際は限りなく透明であり、人間の臓器では同じ目の組織である水晶体と並んで血管のない組織です。しかし、ひとたび細菌感染やその他の原因によって炎症が起こると、角膜内に血管が入って角膜が濁り、その濁りが角膜の真ん中に起こるとたちまち視力が低下してしまいます。こうなると、点眼薬などの治療だけでは元の透明な角膜に戻すことはできず、角膜移植が必要になることもしばしばです。

■角膜が濁る原因
 生来の疾患で成人してから徐々に角膜が混濁してくる角膜変性症という疾患があります。遺伝子異常によるもので、原因遺伝子がわかっている場合は、将来的には遺伝子治療によって進行を止められる可能性があります。そのほか、角膜感染症に罹り、角膜が混濁してしまう場合があります。角膜に感染を起こす病原体は、細菌、真菌(カビ)、ウイルス(ヘルペスなど)、アメーバ(アカントアメーバ)など多岐にわたります。特に、コンタクトレンズを不適切に使用していて、細菌や真菌、アカントアメーバに感染し、点眼薬の治療で落ち着いても角膜混濁が残って視力が低下する場合が増えています。コンタクトレンズは清潔に扱い、細菌などで汚染しないよう注意しましょう。また、全身の免疫異常(関節リウマチなど)によっても角膜に炎症が起こって角膜が混濁し、重症になると角膜に穴(角膜穿孔)が開いて、緊急で角膜移植が必要になることがあります。

■角膜移植の進歩
 角膜移植は、当初、角膜全層を打ち抜いてそれに代わるドナー(提供)角膜全層を移植する「全層角膜移植」が主体でした。その後、角膜の濁っている角膜実質層の部分だけを取り除き、角膜内皮を除いた透明な提供角膜実質だけを移植する「表層角膜移植」や、傷んでいる上皮を修復するために行う「角膜上皮形成」や「角膜輪部移植」が行われるようになり、最近では、ごく薄い角膜内皮層だけを移植する「角膜内皮移植」も開発されて、角膜移植は傷んでいる部分だけを取り除いて入れ換えるいわゆる「角膜パーツ移植」が主流になりました。さらに角膜ではありませんが、羊膜バンクの設立により行いやすくなった「羊膜移植」、自分の角膜細胞を培養して移植する「培養角膜上皮移植」、「培養角膜内皮移植」なども今後は一般的に行われるようになるでしょう。近い将来、iPS細胞も含めた実験室で培養した細胞を移植することが当たり前になる時代が到来するはずです。角膜だけではなく、医学全般における再生医療の進歩が移植医療に大きく貢献しています。

■透明で美しい角膜を守るために
 とは言っても、現在まだ培養角膜移植を一般的に行うことはできず、提供角膜による角膜移植が角膜移植医療のほとんどです。当面の間、提供角膜の必要性は全く変わらず、角膜の供給不足は続いています。先天疾患で角膜移植が必要になることはありますが、角膜感染症などは注意を払っていればまず罹ることが少ない疾患ですので、日常生活では目を清潔に保つなど目の健康にも気を配り、透明で美しい角膜のまま、一生を送っていただきたいと思います。