アイバンクだより Vol.33 |
善意のバトンを届けるために |
愛媛県臓器移植支援センター 兵藤 大輔 |
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私は、平成31年4月より、愛媛県臓器移植支援センターで臓器移植コーディネーターをしています。臓器移植コーディネーターというのは、臓器提供を考えているご家族に必要な説明を行い、提供から移植がスムーズに運ぶよう調整する、"いのちの橋渡し"をすることです。
重い病気や事故等に遭い、最善の医療を尽くすも治療及ばず、回復の見込みがない(終末期)と判断された方について、そのご家族からの「臓器提供について説明を聞いてみたい」というご希望に応じて、臓器提供や移植医療の説明を行います。その上で提供をご承諾された場合に、病院のスタッフや関係各所と協力して、臓器摘出の調整や移植を必要とされる方々へ臓器をあっせんさせていただいております。
臓器移植コーディネーターがあっせんする臓器は、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸の6種類ですが、角膜提供を希望される場合は、愛媛アイバンクと協力して対応に当たります。一方、移植を必要とされている方には移植医療の説明や登録手続きを行っている他、医療機関や一般の方の移植医療への理解を深めるための普及啓発活動も重要な仕事です。
そのため、臓器提供についての自分の意思は、あらかじめ書面に残しておいていただき、元気な時からご家族で話し合い、意思を伝えておくことが大切です。日本では、臓器提供意思表示カード、運転免許証や健康保険証の裏に意思表示欄が設けられておりますので、一度、ご確認いただければと思います。
2018年12月末現在、我国で臓器移植を希望されている方は13,798人となっておりますが、同年に移植を受けることができた方は358人と全体の約3%です。日本は世界と比較して、臓器提供をする人の割合が非常に低い水準の国です。特に、小児は体格の問題で小児からの提供が必要となりますが、日本では順番がなかなか回ってこないため、多額の費用をかけて海外での移植を余儀なくされる場合もあります。海外で移植を受けるということは、本来、その国で移植を待っている方が移植を受けられなくなるということでもあります。
2010年7月の臓器移植法の改正以後、脳死下臓器提供は増加傾向にあり、小児の脳死下臓器提供についても同様です。愛媛県においては、昨年の9月に四国初(全国14例目)となる6歳未満の小児の脳死下臓器提供がありました。わが子を失うという想像を絶する胸中で、提供というご判断をされたご家族に、敬服と感謝の念を抱くばかりです。
私は、臓器提供というのは、提供してもいいという方々の想いを、移植を待っている方に受け取ってもらうものだと思っています。提供することが良いということではありませんし、提供しないことが悪いわけでもありません。ただ、臓器移植についてあまり知らないという方には、是非、知っていただいた上で、臓器提供と移植が必要になった場合について考えていただきたいと思います。提供してもいいという想いを一人でも多くの方へ繋ぐことができるよう愛媛アイバンクの方々と協力しながら努力していきたいと思います。
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