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アイバンクだより Vol.32
角膜クリニック 診察室だより
愛媛大学医学部 眼科 准教授 原 祐子
 私は愛媛大学医学部附属病院で眼科医として勤務をしており、主に角膜疾患を専門としています。当院には私だけではなく角膜専門医は複数在籍しており、さまざまな角膜疾患に対応しています。特に火曜日に行っている角膜専門外来には、愛媛県のみならず香川県や岡山県など県外からも多数来院していただいています。

 角膜とは直径10mm程度、厚さも1mmの半分ほどの透明な組織です。一見、単純な作りの組織に思えますが、残念ながら未だに人工の角膜は開発されていません。そのため怪我などで角膜に穴があいた場合や、角膜が濁って視力が悪くなった場合は、臓器提供していただいた角膜を移植しなければ改善しません。しかし、手術を希望される患者様の数に対して、県内はもとより全国で提供される角膜数は慢性的に不足しているために、角膜移植手術が必要な方は、まず待機リストに登録され、手術の順番がまわってくるのを待つシステムになっています。移植を受けようと一大決心をされて大学病院にこられた患者様にも、まずは順番が来るまでお待ちいただかざるを得ないのが現状です。そのため、愛媛大学では提供角膜の不足を少しでも補うため、アメリカのアイバンクの協力を得て、定期的にアメリカから角膜をゆずってもらい手術を行っています。

 移植した角膜は、手術後生着し透明になり視力が回復しますが、残念ながら永久に透明性を維持しているわけではありません。一般的に人間は自分の組織以外の異物が体内に入ってくると攻撃する機能を持っています。これは免疫といって、例えばウィルスや細菌が体内に入ってきたときに、これらの微生物をやっつけるという、人間が生きていくためには大切な働きです。この免疫のために、他人から移植された角膜を異物とみなしてしまい、攻撃してしまうことがあります。これを拒絶反応といいます。拒絶反応をおこしてしまうと角膜は透明性を失って混濁してしまい視力が悪くなってしまいます。角膜は血管がない組織のため、角膜移植は肝移植や腎移植など他の臓器移植にくらべて手術後の生着率がいいといわれていますが、ある一定の割合で拒絶反応が起こるので、基本的に術後はずっと外来で免疫を調整するような点眼を使用する必要があります。そのため角膜移植を受けた患者様と私たち角膜移植医は長いお付き合いになるわけです。術後の診察では、視力検査や角膜の透明性の検査で拒絶反応や感染症が起こっていないかを判断し、また緑内障などの合併症がでていないかを検査をします。「移植した角膜は元気に働いていますよ」とお話すると、移植をうけられた皆さんは決まって、「角膜を提供していただいた方へ本当に感謝しています」と話されます。たとえば86歳のご婦人は移植手術後20年近く経っていますが、毎日寝る前に角膜を頂いた方のためにお祈りをされているそうです。

 角膜移植という治療は眼科移植医だけでは行えず、角膜を提供してくださる方と、それを橋渡しするアイバンクの協力なしには成り立ちません。少しでも多くの患者様に光を届けられるよう、これからも皆様の温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。我々も、ご献眼いただいた方やそのご家族のお気持ちにお応えできるよう、真摯に角膜診療に携わっていきたいと思います。