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アイバンクだより Vol.26
患者さんを支える心強い体制〜治療に前向きに取り組んでいただくために〜
松山赤十字病院 眼科 山本 康明
 私の勤務する松山赤十字病院は臨床最前線病院として救急疾患を含むあらゆる疾患に対しても治療を担っており、とくに網膜硝子体手術や眼腫瘍手術においてはほぼ県下トップといえる手術件数をこなしております。

 角膜移植については、宇野敏彦前部長が平成21年4月にスタート、その後23年4月に私が赴任し、引き継いでいます。

 最近では24年8月に全層角膜移植術を1年ぶりに行ないました。その患者さんはこれまでに3回網膜剥離を繰り返し、何回も手術を受けてこられましたが、ついには角膜が透明でなくなり、網膜が復位しても角膜浮腫、混濁のために視力が回復しない状態でした。網膜剥離の手術は網膜がはがれてこないように眼内にガスやシリコンを入れ、それらが浮き上がる力を利用して網膜を復位させる必要があり、術後に1週間以上ずっとうつ伏せの姿勢を取り続けなければなりません。つまり、手術が終わってからも患者さんはとても大変な入院生活を余儀なくされ、肉体的にも精神的にもつらい治療に向き合わなければならないことになります。そんな大変な思いをして頑張って、せっかく網膜が復位したにもかかわらず、角膜の混濁のためにはっきりとものが見えないという状況に、患者さんはとてもがっかりされておられました。

 そこで愛媛アイバンクに相談したところ、県内だけでなく他府県アイバンクに余剰角膜がないか探していただけるとのことで、広域あっせんをお願いし、運良く2日後に角膜のあっせんを受けることができました。

 早速、角膜移植術を行い、角膜移植片は拒絶反応などもなく順調に経過していました。術後、早期から角膜は透明性も良く、患者さんはぼやけが取れて、輪郭が分かるようになってきたと喜んでおられました。ところが喜びもつかの間、また同じ眼に網膜剥離が起きてしまったのです。そして今回も網膜を復位させるためには再度手術を行ってシリコンを硝子体内に挿入し、うつ伏せを必要としました。このとき、もし角膜移植を行っていなければ手術は眼底が見づらい困難な状態で行う必要があるばかりでなく、患者さんにとっては、視力回復が望めないままでうつ伏せの入院を再び行わなければならないという辛い状況に追い込まれていたことでしょう。ひょっとすると、治療に積極的な気持ちになれなかったかもしれません。しかし、その患者さんは弱音をひとことも吐かず、もう一度網膜復位術を受けて、うつ伏せを頑張ることをすぐに受け入れてくださいました。もちろん、移植した角膜が、今回の網膜復位術に持ちこたえられるかという問題はありましたが、アイバンクに斡旋いただいた角膜はとても新鮮だったためか、術中、術後とも角膜はずっとかわらず透明性を維持していました。

 患者さんは繰り返す再入院、手術にもかかわらず、視力回復の希望を実感として持っていくことができたようで、前向きな気持ちでうつ伏せ治療に取り組まれている様子でした。そして、幸い網膜が復位してから間もなく視力が0.1に回復しました。

 愛媛アイバンクの事業はここ数年、整備が進み、私が研修医の頃に比べますと、角膜移植手術医にとっても、また県内で御献眼をいただきにあがる当番医師の立場からみても、格段にスムーズな体制になっています。これにより、今回のように、広域あっせんによる提供を受けることもできます。各県ごとの角膜アイバンク同士の緊密な協力体制が整ってきていることが、早々に提供をいただけたことからわかります。

 こうした支えから得る安心感は、治療を手助けする私ども医療者にとっても強い武器となることはもちろん、患者さんが前向きに自らの病気の治療に取り組む力として、それ自体が最強の治療になるものであることが、今回の角膜移植の経験で実感いたしました。

 ご献眼を表明されておられる方々の崇高なご意思やご遺族のお気持ちにお応えできますよう、また、患者さんが自らの病に屈することなく積極的に治療に取り組むことができますよう、我々も今後さらに努力して参りたいと思います。