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アイバンクだより Vol.21
光のリレーが途切れることなく、つながるよう、私たちも微力ながらお手伝いしていきたい
愛媛大学医学部 眼科 原 祐子

 私は現在愛媛大学医学部付属病院に勤務しています。

 大学病院の外来は、毎日、ヒトであふれかえっていますが、火曜日の角膜専門外来も例外ではありません。角膜外来というだけに、角膜移植手術をすでに受けられた方、角膜移植を待っている方、その他さまざまな角膜の病気を患われた方が受診されます。

 角膜とは直径10mm程度、厚さも1mmの半分ほどの透明な組織です。一見、単純な作りに思えますが、いまだに人工の角膜代用物はありません。視力回復のために角膜移植手術が必要な方は、まず待機リストに登録され、手術の順番がまわってくるのを待つシステムになっています。移植を受けようと一大決心をされて大学病院にこられた患者様にも、まずは順番が来るまでお待ちいただかざるを得ないのが現状です。この角膜外来に通う患者さんの一人に、角膜移植手術をうけるよう、近所の眼科で勧められた、70歳過ぎの男性がおられました。仏頂面で、みるからにわがままで、頑固な感じのするおじいちゃんで、奥さん、息子さん、お嫁さんを引き連れられての受診でした。”いつ手術をしてくれるんや?”という質問に、角膜移植は待機リストに登録し、順番を待っていただくため時間がかかることを説明すると、”そんなの待っておれん!いったい何ぼ払ったらすぐしてもらえるんや?”と声高に言われました。お金はいりませんし、お金を頂いたから順番が早くなるものではない。登録者の方の善意でアイバンクに提供していただいた角膜を、必要なビトが平等な条件で待つシステムになっているのです、と説明したものの、納得されない様子です。その後も外来に来るたび同じことを聞かれましたが、ようやく順番が回ってきて角膜移植を受けられました。手術前は、手が揺れているのがわかる程度で、外来でも常に家族の介助か必要なほどの視力しかなかったのですが、術後は診察のたびに、今日はヒトの形がわかるとか、口が動いているのが見えてきたと、非常に喜んでおられました。そのおじいちゃんが退院前にまじめな顔をして、”先生、私はこの角膜を私にくれたヒトにお礼をしたい。お金を差し上げたいが、そんなことをいったらまた先生に怒られるなあ。でもどうしたら恩返しになるかわからないんです。”といわれました。角膜を提供してくれた方も、これだけ見えるようになったと喜んでいるあなたをみることだけでうれしいと思いますよ、とお話しましたが、やはり納得されないようでした。しかし、次の受診のときに、にこにこしながら、臓器移植提供カードを3枚見せてくれたのです。おうちに帰られて、お礼がしたいができない話をされたとき、ご家族からそれだったらみんなで臓器提供カードを記入しよう、それが恩返しではないかという話になったのだそうです。”自分の体は病気ばかりで他のヒトのお役に立てないが、私か手術をうけて見えるようになったことを喜んでくれた家族が、こんなことをしてくれたんです。”と、手術前はいつも仏頂面だった方が本当にとてもうれしそうにお話してくれたのが印象的でした。

 日本はいまだに提供角膜が少なく、角膜移植をお待ちの方がたくさんおられる現状を、われわれ角膜移植医は日々痛感しています。しかし、着実に光のリレーはつながっているのです。一人の患者さんを真摯に治療することにより、アイバンクの活動を理解していただき、協力してくださる方が増えてくる。この光のリレーが途切れることなくつながるよう、我々医療サイドも微力ながらお手伝いしていきたいと思います。