司会:臓器移植法が改正されて脳死が人の死であると認められましたが、そのほかにも臓器移植に関する取り決めが変わるそうですね。
篠原:もともと臓器移植法は第三者への臓器提供を前提につくられた法律なので、移植希望者の中から必要性が高い人に優先して移植されてきました。この改正によって親族への優先提供が可能になり、配偶者、もしくは親か子への提供を指定できるようになったのです。お父さんが亡くなるときに息子さんに角膜をということが可能になります。
司会:角膜は、これまでも脳死ではなく心臓停止後に提供を受けていましたが、これについては今回の法律改正で変わった点はないのですか。
篠原:それはいままで通りです。腎臓と角膜については、臓器提供者の年齢制限もありませんし、提供者本人の意思表示も不要です。本人がアイバンクなどに登録していなくても、家族の同意を得られれば角膜を提供することがこれまで通りできます。今回の改正では、世界標準にならい、脳死状態で行う心臓などの臓器提供も、親の同意でその子どもから提供できるようになりました。
司会:臓器移植法の改正で、臓器移植支援センターでは対応が変わるのでしょうか。
篠原:法律が変わったばかりなので、具体的な動きはこれからですが、すでに県内3市町の保険証や協会健保の裏面に臓器提供の意思表示欄ができたりして、ドナーカードの所持率はだいぶ上がってきています。本年度は、愛媛FCに協力していただいて、オリジナル意思表示カードを作成し、配布していますが、なかなか好評です。今後もいろいろときっかけづくりを仕掛けていきたいと考えています。
司会:今はご目宅ではなく病院で亡くなられる方が多いと思いますが、愛媛県立中央病院では臓器提供を増やす収り組みや検討されていることはあるのでしょうか。
吉岡:県立中央病院としては、電子カルテの中に臓器移植の意思の有無を載せてはという意見が前からありますが、まだ全体の合意が得られていないのが現状です。先ほどのお話にもあったように保険証に記してあれば一目瞭然です。ただ、提供意思の不明な人に、事務的に臓器提供の意思確認をすると、怒り出す人がいそうで、なかなか口にできません。微妙な問題だけに、現場としてもなかなか踏み切れないのが実情です。
司会:臓器提供という選択肢を、もっと患者さん本人やご家族の方に知っていただく必要があるようですね。
吉岡:私がアイバンク設立のお手伝いをさせていただいたころは、実は角膜にしろ腎臓にしろ提供は年々増えていました。しかし、臓器移植法ができてから、逆に減少しています。これは脳死による臓器提供には、まだまだ心理的な抵抗が大きいからではないでしょうか。角膜や腎臓の場合、脳死ではなく心臓が停止してから摘出するということをもっと強調すべきではないかと思っています。心臓がまだ動いている状況で臓器提供の意思を確認しなければいけない脳死と違い、心臓死であれば亡くなられた直後でも比較的お声掛けしやすい。できるところから始めるというのも大事なことなので、県立中央病院としても積極的に取り組んでいきたいです。 |