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アイバンクだより Vol.22
広げよう愛媛の移植の輪
本人が提供の意思を確実に伝え医療従事者はその意思をきちんと把握する
愛媛県では角膜移植用の角膜が常時不足し、提供角膜数は数年前から減少傾向が続いています。一方で角膜移植技術は大きく進歩し、必要とされる角膜はさらに増えています。角膜に限らず移植用臓器の恒常的な不足に悩む日本の現状を踏まえ、愛媛で臓器移植にかかわる3人の方々にお話をお伺いしました。
門田 洋子
フリーアナウンサー
ライオンズクラブを通じて
骨髄移植に身近に関わる。
菅 成器
愛媛県立中央病院
院内臓器移植コーディネーター
として活躍中。
山口 昌彦
愛媛大学医学部眼科講師
角膜専門医であり
(財)愛媛アイバンク理事。
聞き手
(財)愛媛アイバンク理事長
岡本 茂樹
 
技術の発達と共に今後さらに進む角膜不足

司会:愛媛は角膜移植手術が全国的に見ても優れた県ですが、角膜の提供数は少なく、角膜不足は深刻ですね。

山口:そうです。角膜移植を希望する患者様はとても多く、半年以上も待って角膜の提供があり、ようやく角膜移植できるという状況です。国内の角膜は絶対的に不足していて、アメリカからの輸入角膜で補っています。愛媛県は角膜移植の技術を持つ眼科専門医が他の県に比べて充実しているので、角膜の提供さえあればもっと多くの患者様の視力を救うことができます。

司会:今後、角膜移植を必要とする方は増えるのでしょうか。

山口:そうですね。眼科医療の発展にともなってたくさんの眼科手術が行われるようになりました。このため、手術の合併症として角膜障害の数は、これからも増える傾向にあると思います。ただ、角膜移植の技術も進歩していて、角膜の必要な部分だけを移植するパーツ移植で手術の負担を少なくして角膜を有効利用する試みがなされたり、拒絶反応のリスクをできるだけ下げることで移植の成功率を高めるなど、移植技術の革新は目覚しいものがあります。技術が進歩することで角膜移植は増えるとも言えますね。

司会:県外からもたくさんの方が角膜移植手術を受けに愛媛県に来られるそうですね。

山口:四国はもちろん中国地方、九州からも来られます。

菅:愛媛県内で角膜移植を行っている病院はどのくらいあるのですか。

山口:コンスタントに行っているのは愛媛大学病院、住友別子病院、岡本眼科クリニックなどですが、角膜さえあれば、松山赤十字病院や県立中央病院、市立宇和島病院などでも可能です。

国内の需要は国内で賄うことが原則

司会:アメリカでは必要な角膜数の倍ぐらいが集まっています。日本はアイバンク50周年を迎えましたが、そのスタート時点ではアメリカの提供率も日本とさほど変わりませんでした。その後アメリカは効果的に活動して増加に転じたのに対し、日本はほとんど増えず、その差は一気に開いてしまいました。

山ロ:アメリカでは、角膜がだんだん濁る角膜変性症という、若いと20歳ぐらいに発症し、働き盛りになった頃に見えなくなる進行性の病気は、早い時期に角膜移植をします。日本では角膜が不足しているため、視力が大幅に低下してからでないと角膜移植が受けられません。病気の早い段階で角膜移植をして、視力低下による不便を少なくするには、角膜提供がたくさんないと実現しないと思いますね。

門田:なるほど、そういうことなんですね。アメリカでは角膜移埴で新しい技術が広まってから、さらに早期に移植手術が行われるようになってアメリカ国内で使う角膜の量がすごく増えた。そのため国外の移植手術に回せる角膜が減ってきているそうです。

司会:今後「日本の移植手術への角膜確保は日本でしてください」と言われるようになる可能性はすごく高いんです。アメリカのようにたくさんあっても、だんだん足りなくなってくる恐れがあります。

門田:そういう意味でもアイバンク活動はすごく重要ですね。ところで、アメリカから送るには時間がかかりますよね。その辺は大丈夫なんですか。

山口:摘出した角膜を保存する特別な液があり、それだと約1週間は元気なままで持つと言われています。おかげで、緊急手術の医師・患者双方の負担も軽減されています。この日時にやりましょうと決めて定期的に手術できるというメリットもあります。

管:心臓だと4時間以内に血流を再開させないといけないので、あまり遠い所まで輸送できません。松山からだと、飛行機で運んでも大阪が限界でしょうか。東京まで飛んでもその先のことがあります・・・。肺は四国から東北まで行った実績があり、8時間。肝臓は12時間です。

門田:それに比べると角膜は1週間も時間の余裕があるんですね。

司会:門田さんはご親戚が白血病で亡くなられたという辛い経験をお持ちだそうですね。

門田:はい。その当時はまだ骨髄バンクもなく、身内のつてで提供者を探したのですが、残念ながら誰も適合する人がいませんでした。骨髄移植の場合はマッチングがすごく難しく、現在、骨髄バンクの登録者数は30万人ですが、すべてのHLAタイプがぴったり一致する人は何名かしかないという複雑さです。その頃に骨髄バンクがあれば助かっていたかもしれないと思うと・・・。それ以来、臓器移植のことについて興味を持って、ライオンズクラブの立場としても積極的に関わってきました。

司会:日本人は臓器提供を嫌がる民族と言われていますが、実際にアンケート調査をすると臓器提供したいという人は約30%はいるそうです。

管:その30%の人の意思を生かせるシステムがまだないというのが、日本の一番の問題ではないかと思います。
今年のWHO会議でイスタンブール宣言というのが出されました。国は自国の臓器を必要とする者のために、自給自足を達成する努力をすべきである。国外患者への移植のために、自国民の移植の機会が減少しないようにしなければならない。つまり、移植に必要な臓器は自国で調達しなさいというような内容のものです。例えばアメリカに行って心臓移植を受けたくても、アメリカの移植希望者が優先されて、日本人は移植が受けられなくなるかもしれません。自分たち、すなわち日本で必要なもの、ひいては愛媛で必要なものは愛媛で賄わないといけない時代が来るかもしれないのです。

家族や医療関係者への意思表示が大切

門田:角膜は200歳まで生きることができるとうかがいました。そんなに役に立つなら献眼をと思うのですが、いざとなると怖いような気もします。「それはいいことだ」って自分の中でしっかり理解できれば、献眼してみようという意思につながると思うのですが・・・。

山口:身の周りに献限をした人が少なすぎて、なかなか実感できないんですよね。目が不自由ですごく困っている人も周囲にそんなに多くなかったりしますし。だけど、待っている人にとってはすごく切実な問題です。

司会:角膜移植で救えるのに、角膜が不足しているせいで失明してしまうというのは、本当につらいことですね。提供する側も、機会があれば提供してもいいという消極的な考え方から、もっと積極的な考え方になりたいものです。

門田:逆に提供する側からすると、他の人の目の中で200歳まで生きるっていうのは素晴らしいことですよ。
ところで、献眼には年齢とか近眼、病気とかの制限はないのですか?

山口:特にありません。見た目で透明な角膜であれば、提供眼としてほぼ問題なく役に立ちますので、提供をするお気持ちを一番に考えていただきたいと思います。

司会:献眼登録を実際の献眼に結びつけるには、どんなことが大事なのでしょう。

菅:骨髄バンクだと生きている間に提供するので、自分の意思が反映されやすいのですが、角膜の場合は死後提供になるので、提供者の意思はもちろん、周りの方の「この人の角膜を役立ててあげよう」という意思がすごく大切になってきますね。

門田:献眼の意思がうまく伝わらないのは、家族にとっては「そんなかわいそうなこと」と思うからかも知れないですよね。だから、そういうことを話し合う機会とか、きっかけがいっぱい必要なのではないでしょうか。

菅:そうです。死後どうしたいかという意思を家族に伝えておくことは大事です。骨髄移植の場合はご本人の意思があって、ご家族もそれを了解し、提供したことにその場で自分が満足を得られますが、死後提供の場合はそうはいかない。「死」を受け止めるという意味でも、いろいろなことを話しておかなければいけないんだろうと思います。

提供の意思をきちんと把握できる仕組みを

司会:提供の意思が十分に伝わらない、という現状を克服するにはどうすればいいのでしょうか。

管:そのような選択肢もある、ということを医療従事者から話すことがとても大事だと思います。ただ、そのタイミングというのは非常に難しい。微妙な状況のなかで、ご家族にいろいろな選択肢をきちんと把握していただけるような病院側のシステムを作らなければならないと思います。

司会:角膜提供の場合はお亡くなりになる直前に意思の表示があるということが多いですね。

管:角膜の場合は若干、臓器とは違っていて、心停止をした後でも、お亡くなりになったことを確認した後でも、お話することができます。ですから、ご家族がその死をきちんと受け止められた上でお話をする体制があれば、十分に聞き入れていただけると考えます。どのような道を選択することができるのかをすべて示すことが、医療従事者にとって、一番大事なことだと思います。病院全体の意識というものも変えていかないといけませんね。

司会:現在、愛媛アイバンクでは、健康保険証の裏に「私は、アイバンクに登録をしています。」という意思表示シールを貼っていただく啓発活動を行なっています。やはり自分の意思を、その死後においても反映させていける方法を、いろいろな機会を捉えてアピールしていく必要を感じました。本日は貴重なご意見をいただきありがとうございました。

2008年12月16日・愛媛県医師会館にて(敬称略)