司会:アメリカでは必要な角膜数の倍ぐらいが集まっています。日本はアイバンク50周年を迎えましたが、そのスタート時点ではアメリカの提供率も日本とさほど変わりませんでした。その後アメリカは効果的に活動して増加に転じたのに対し、日本はほとんど増えず、その差は一気に開いてしまいました。
山ロ:アメリカでは、角膜がだんだん濁る角膜変性症という、若いと20歳ぐらいに発症し、働き盛りになった頃に見えなくなる進行性の病気は、早い時期に角膜移植をします。日本では角膜が不足しているため、視力が大幅に低下してからでないと角膜移植が受けられません。病気の早い段階で角膜移植をして、視力低下による不便を少なくするには、角膜提供がたくさんないと実現しないと思いますね。
門田:なるほど、そういうことなんですね。アメリカでは角膜移埴で新しい技術が広まってから、さらに早期に移植手術が行われるようになってアメリカ国内で使う角膜の量がすごく増えた。そのため国外の移植手術に回せる角膜が減ってきているそうです。
司会:今後「日本の移植手術への角膜確保は日本でしてください」と言われるようになる可能性はすごく高いんです。アメリカのようにたくさんあっても、だんだん足りなくなってくる恐れがあります。
門田:そういう意味でもアイバンク活動はすごく重要ですね。ところで、アメリカから送るには時間がかかりますよね。その辺は大丈夫なんですか。
山口:摘出した角膜を保存する特別な液があり、それだと約1週間は元気なままで持つと言われています。おかげで、緊急手術の医師・患者双方の負担も軽減されています。この日時にやりましょうと決めて定期的に手術できるというメリットもあります。
管:心臓だと4時間以内に血流を再開させないといけないので、あまり遠い所まで輸送できません。松山からだと、飛行機で運んでも大阪が限界でしょうか。東京まで飛んでもその先のことがあります・・・。肺は四国から東北まで行った実績があり、8時間。肝臓は12時間です。
門田:それに比べると角膜は1週間も時間の余裕があるんですね。
司会:門田さんはご親戚が白血病で亡くなられたという辛い経験をお持ちだそうですね。
門田:はい。その当時はまだ骨髄バンクもなく、身内のつてで提供者を探したのですが、残念ながら誰も適合する人がいませんでした。骨髄移植の場合はマッチングがすごく難しく、現在、骨髄バンクの登録者数は30万人ですが、すべてのHLAタイプがぴったり一致する人は何名かしかないという複雑さです。その頃に骨髄バンクがあれば助かっていたかもしれないと思うと・・・。それ以来、臓器移植のことについて興味を持って、ライオンズクラブの立場としても積極的に関わってきました。
司会:日本人は臓器提供を嫌がる民族と言われていますが、実際にアンケート調査をすると臓器提供したいという人は約30%はいるそうです。
管:その30%の人の意思を生かせるシステムがまだないというのが、日本の一番の問題ではないかと思います。
今年のWHO会議でイスタンブール宣言というのが出されました。国は自国の臓器を必要とする者のために、自給自足を達成する努力をすべきである。国外患者への移植のために、自国民の移植の機会が減少しないようにしなければならない。つまり、移植に必要な臓器は自国で調達しなさいというような内容のものです。例えばアメリカに行って心臓移植を受けたくても、アメリカの移植希望者が優先されて、日本人は移植が受けられなくなるかもしれません。自分たち、すなわち日本で必要なもの、ひいては愛媛で必要なものは愛媛で賄わないといけない時代が来るかもしれないのです。 |