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アイバンクだより Vol.21
愛媛から変えよう角膜移植の未来
提供意思のスムーズな確認が角膜不足、解消の決め手に!
愛媛県は年間約100例の角膜移植が行われ、全国でも角膜移植が盛んな県です。しかし、移植用角膜は常に不足しているため、その多くは県外や海外から提供されたものを使用しています。この慢性的な角膜不足の問題にどう取り組んでいくのかを、県内で移植医療に携わる3人の専門家にご意見をお伺いしました。
宇野 敏彦
愛媛大学眼科准教授。
国内でも有数の
角膜手術のエキスパート
濱上 邦子
愛媛県保健福祉部長
松田 久美子
愛媛県立中央病院副院長。
眼科医として県内の
眼科医療の第一線に立つ
司会
(財)愛媛アイバンク理事長
岡本 茂樹
 
県外の角膜に頼る愛媛の厳しい現状

司会:愛媛県内では角膜移植に便う角膜が不足していると言われていますが、角膜移植を受けるのにどれくらい待たないといけないのでしょう?

宇野:愛媛大学病院眼科は県内で最も多くの角膜移植を行っていますが、希望される患者様も多く、一年から二年くらいお待ち頂いているのが現状です。以前と比べると短縮されていますが、ご高齢の方も多く、待機期間をもっと短くする必要があります。愛媛県内では年間に約100例の角膜移植が行われ、国内有数の移植技術を誇っていますが、提供者不足による角膜不足が最大のネックになっています。

司会:愛媛県内で角膜の提供は年間に5〜10眼程度ですが、足りない分はどうしているのですか?

宇野:県外のアイバンクヘ依頼して提供してもらっています。しかし提供して頂いた地域でも移植を待たれている患者様がおられますし、国内の角膜は絶対量が不足しています。そのためやむなくアメリカのアイバンクからも角膜の提供を受けています。

司会:日本では年間約1,500例の角膜移植が行われているといわれていますが、そのなかで海外からの角膜による移植はどれくらいでしょう?

宇野:全国ではおそらく3〜4割くらいでしょうか。しかし海外でも角膜の需要は急増しており、海外に頼るのにも限界があります。愛媛県内の角膜移植には、県内から提供いただいた角膜を使用させてもらうことが理想的です。

角膜提供の意思を最大限生かす愛媛県の新たな取り組み

司会:角膜不足に対して、愛媛県としてはどのような取り組みをされているのですか?

濱上:まずは県民の皆さんに角膜移植だけでなく、臓器移植全般に関する理解を深めて頂くための啓発活動に力を入れています。その一環として毎年10月の「臓器移植普及推進月間」には、臓器提供意思表示刀−ドの配布と街頭キャンペーンを行っています。

司会:意思表示カードが導入された時はすごく話題になりましたが、最近あまり耳にしなくなった気がしますね。

漬上:そうですね。愛媛県では意思表示カードを毎年3〜5万枚、これまでに60〜70万枚を配布しました。しかし平成18年度の国の調査では、意思表示カードの認知度は66%でしたが、そのうち所持者は8%に過ぎませんでした。つまりほとんどの人が意思表示カードを所持するまでに至っていないのです。また、ご家族がご本人の提供意思を知らないために、そのご意思が生かされなかったということも起きています。

司会:アメリカでは、運転免許証に提供意思を表示するようになっていますね。日本の場合、医療機関を受診する際には、必ず健康保険証を提示するので、そこに提供意思を表示できると伝わりやすいですね。

濱上:そこで県内の市町に対し、国民健康保検証に、提供意思表示ができる欄を作り、そこに意思表示シールを貼るように働きかけました。それにより愛媛県下の半数の市町からは非常に前向きなお答えを頂き、すでに実施されているところもあります。県職員へも被保険者証の余白に貼るシールと意思表示カードを配布しました。これを機に、多くの職員が健康保険証へ臓器提供意思のシールを貼ってもらえるようにしていきたいですね。しかし臓器提供は強制するものではありませんし、死んだときのことを思って意思表示カードを持つというのも心理的に抵抗があるようで、急には浸透しないのが現状です。たとえそうであっても、あきらめず啓発活動を継続して、コツコツとひとり一人のご理解を得るのがこの活動の基本だと考えています。

司会:医療現場に対してはどのように取り組まれていますか?

濱上:愛媛県の衛生環境研究所に臓器移植支援センターを設けました。そこに専任のコーディネーターを置き、医療従事者と臓器提供者との橋渡し役として活動してもらっています。さらに県内17の医療機関にも院内コーディネーターを配置し、情報収集やご遺族へ心のケアなどを行い、移植をスムーズに進めています。そのほかに医療従事者が、患者様やご家族に臓器提供に関する意思確認を行う際に役立つバンフレットも作成して配布しました。

宇野:最近はコーディネーターの活躍により、臓器提供者やそのご家族の方への精神的ケアとともに事務的処理も迅速に行えるようになっているのではないでしょうか。医師は患者様への対応を含め本来の医療に集中することができ、ご遺族の方にとっても「提供して良かった」と思えるような体制が、整いつつあるのではないでしょうか。

司会:ご本人やご家族の提供意欲がそがれたり、提供された臓器が生かせないようなことが絶対に起こらないようにするには、コーディネーターは不可欠な存在です。受媛アイバンクでは、全国でも数少ない「アイバンクコーディネーター」を独自で養成していますが、まだ人数が少ないので充実させていきたいですね。

医療現場には、もっと積極的な意思確認システムが必要

司会:移植臓器を摘出する第一線の病院として、どういう取り組みをしているのかをお聞かせ下さい。

松田:これまでは、患者様側から臓器提供の申し出がある場合にのみ対応しておりましたが、それだけでは「登録」が「提供」に結びつかない場合が多いのが現状です。私たちの病院は「臓器提供マニュアル」を整備して2006年から運用しています。臓器提供の意思のある患者様がおられた場合、主治医はまず院内コーディネーターと連絡を取り、提供できる状態かチェックします。そして、主治医がご家族の意思を確認して、アイバンクなどの臓器移植ネットワークヘ連絡します。マニュアルが整備されたことで、臓器提供意思が無駄になるケースが減ることと思います。

意思表示シールのPRをもっとしてほしい!

司会:意思表示カードや意思表示シールが貼られた健康保険証をどのように活用していますか?

松田:臓器提供意思シールの貼られた健康保険証は、保険証確認時に電子カルテヘ提供意思を入力します。さらに初診や入院時の問診票にも提供意思を記入して頂くように計画中です。事前に患者様のご意思がわかると、ご本入やご家族に移植に関する話がしやすくなります。しかし健康保険証の提供意思表示欄は活用されていないのが現状です。もっとPRして頂きたいですね。健康保険証に「提供したい」・「提供したくない」が明示されるようになれば、現場の医療従事者はご意思を実現するお手伝いができるようになります。また、ご本人が意思表示できない状況でも、ご家族の意思だけで提供できる場合があるということも知って頂きたいですね。

技術が進歩しても求められるアイバンクめざせ角膜移橿先進県!

司会:提供の意思はあっても「自分の角膜は使えるのか?」と案じている人もいます。使用できない角膜というのはあるのでしょうか?

宇野:心配をしなくても大丈夫です。角膜移植の技術は進歩していますから、摘出された角膜はほぼすべて活用しています。角膜の部分のみ移植する方法も確立しできました。提供頂いた角膜を最大限有効に活用する技術ができてきています。

司会:血液製剤などで問題になっている感染症の問題はどうでしょう?

宇野:どのような移植にも感染症のリスクはつきまといます。提供頂く前にチェックリストに沿って感染症検査をして。提供したの使われなかったということがないようにしています。使われなかったらご遺族もご無念でしょうから、細心の注意を払っています。

濱上:現在「再生医療」が進んでいますよね。角膜ではどうなのですか?

宇野:健康な方の角膜上皮細胞や□の中の粘膜の細胞を培養して目に移植するといった、ご自身の細胞を使う再生医療は実用化されています。現在ではアイバンク等で提供された角膜からの再生も模索されていますね。しかし再生医療ですべてが置き換えられるようになるには、まだ多くの時間が必要なので、これからもアイバンクが角膜移植でとても大事な役割をはたすことは間違いありません。

司会:しかし全国どのアイバンクも、非常に厳しい経済状況下にあります。アイバンク活動は、賛助会員と呼ばれる団体や個人からの会費や募金、寄付に頼っているからなのです。もっともっと積極的に献眼運動を進めるには、たくさんの力を結集する必要があります。今まさに、角膜移植を突破口にして「臓器移植」という問題を、社会全体で考える時期にさしかかっていると思います。アイバンクー行政・医療機関、それぞれに多くの課題を抱えているのがわかりました。しかし将来的には「愛媛県に行けば角膜移植を受けられる」と言われる角膜移植先進県をめざして、これからも手を取り合ってがんぱっていきましょう。本日はありがとうございました。

2007年12月18日・愛媛県医師会館にて(敬称略)