司会:角膜不足に対して、愛媛県としてはどのような取り組みをされているのですか?
濱上:まずは県民の皆さんに角膜移植だけでなく、臓器移植全般に関する理解を深めて頂くための啓発活動に力を入れています。その一環として毎年10月の「臓器移植普及推進月間」には、臓器提供意思表示刀−ドの配布と街頭キャンペーンを行っています。
司会:意思表示カードが導入された時はすごく話題になりましたが、最近あまり耳にしなくなった気がしますね。
漬上:そうですね。愛媛県では意思表示カードを毎年3〜5万枚、これまでに60〜70万枚を配布しました。しかし平成18年度の国の調査では、意思表示カードの認知度は66%でしたが、そのうち所持者は8%に過ぎませんでした。つまりほとんどの人が意思表示カードを所持するまでに至っていないのです。また、ご家族がご本人の提供意思を知らないために、そのご意思が生かされなかったということも起きています。
司会:アメリカでは、運転免許証に提供意思を表示するようになっていますね。日本の場合、医療機関を受診する際には、必ず健康保険証を提示するので、そこに提供意思を表示できると伝わりやすいですね。
濱上:そこで県内の市町に対し、国民健康保検証に、提供意思表示ができる欄を作り、そこに意思表示シールを貼るように働きかけました。それにより愛媛県下の半数の市町からは非常に前向きなお答えを頂き、すでに実施されているところもあります。県職員へも被保険者証の余白に貼るシールと意思表示カードを配布しました。これを機に、多くの職員が健康保険証へ臓器提供意思のシールを貼ってもらえるようにしていきたいですね。しかし臓器提供は強制するものではありませんし、死んだときのことを思って意思表示カードを持つというのも心理的に抵抗があるようで、急には浸透しないのが現状です。たとえそうであっても、あきらめず啓発活動を継続して、コツコツとひとり一人のご理解を得るのがこの活動の基本だと考えています。
司会:医療現場に対してはどのように取り組まれていますか?
濱上:愛媛県の衛生環境研究所に臓器移植支援センターを設けました。そこに専任のコーディネーターを置き、医療従事者と臓器提供者との橋渡し役として活動してもらっています。さらに県内17の医療機関にも院内コーディネーターを配置し、情報収集やご遺族へ心のケアなどを行い、移植をスムーズに進めています。そのほかに医療従事者が、患者様やご家族に臓器提供に関する意思確認を行う際に役立つバンフレットも作成して配布しました。
宇野:最近はコーディネーターの活躍により、臓器提供者やそのご家族の方への精神的ケアとともに事務的処理も迅速に行えるようになっているのではないでしょうか。医師は患者様への対応を含め本来の医療に集中することができ、ご遺族の方にとっても「提供して良かった」と思えるような体制が、整いつつあるのではないでしょうか。
司会:ご本人やご家族の提供意欲がそがれたり、提供された臓器が生かせないようなことが絶対に起こらないようにするには、コーディネーターは不可欠な存在です。受媛アイバンクでは、全国でも数少ない「アイバンクコーディネーター」を独自で養成していますが、まだ人数が少ないので充実させていきたいですね。 |