司会:角膜の不足は全国的な傾向ですが、どうして提供が少ないのでしょう。愛媛県は眼球提供登録者は1万2千人もいらっしゃるそうですが。
原:いつも感じることは、眼球の提供の意思の確認がとても難しいということです。入院する際、「私は眼球提供登録をしているので、万が一の時は提供します」とおっしやる方は、ごく希です。病院にかかる際には目然な形で臓器提供の意思を表示してもらうのが、理想だと思うのです。また医療機関の側も、そういった意思を確認することができればと思います。
松田:実は、愛媛県立病院では、電子カルテに、患者さんの基本情報を入力する際、その情報の一つとして、臓器提供の意思の有無を確認することを検討しています。
谷口:ご家族に眼球提供のお話をするのは主治医ですから、ドナーのカルテに提供の意思についての情報があれば、その意思を生かすことができるわけですね。総理府が国民の意識調査をしたところ、現在、約35%の入が臓器提供の意思を持っているそうです。しかし反対に、臓器提供をしたくないと答えた入も30%おられます。前もって意思の確認ができれば、ドナーのご家族にもお話がしやすいのです。
松田:現在は患者様の担当医師が、ご家族に提供の確認をするのですが、ここにクッション役のような人がおられると、医師も話しやすいですね。またドナーの家族の立場からも、提供の意思表明をしやすいということがあると思います。それと眼球提供登録者の方は必ずご家族に日頃から提供についてお話しておいていただくことも大事です。入院中は本人・ご家族ともに肉体的・精神的に大変なので、つい、提供の意思表明をしそびれてしまうということもありそうですね。
谷口:「提供したい」という意思をしっかりと受けとめて、移植に生かすには、医師、アイバンク、家族の緊密な協力が絶対的に必要ですね。
松田:そういう意味でも、健康保険証やカルテに臓器提供の意思表示の項目があることは、とても大切だと思いますね。
谷口:献眼してもいいなぁと漠然と思っている人もたくさんおられます。そういう人に、一歩進んで欲しいわけです。自分が死んでも、角膜は誰かの人生を照らしていると考えるのは、日本人の考え方方にもすごく響くと思うのです。
司会:米国では、日本に比べ移植が盛んですが、アメリカ人だけが奉仕精神が旺盛で、日本人は奉仕の精神がないというわけでは決てないですよね。
原:そうです。臓器移植をスムーズに進めるシステム全体が、まだまだ日本はうまく機能していないというのが一番の原因だと思います。 |